(写真1)けやきホールの受付風景 「おだわら市民学校」は、小田原市文化部生涯学習課が主催し、地域課題の解決のための担い手を育成する“新たな学びの場”です。1年目の基礎課程で「郷土愛」を、2年目の専門課程で「実践につなげる課題解決を担いうるチカラ」を2年間学びます。専門課程では、6つの専門分野の中から関心あるテーマを選びます。また、教養課程として「郷土の魅力を知り伝える」と「二宮尊徳の教えを継承する」が用意され、専門課程の受講者はこちらも受講することができます。このおだわら市民学校を市民へより広く知っていただくために、生涯学習センターけやきで「おだわら市民学校公開講座」が開催されましたので、聴講してきました。
1.おだわら市民学校公開講座
7月23日土曜日の陽射しが厳しい真夏の午後、13時半の開場に間に合うように、「生涯学習センターけやき」へ出かけました。既に会場の準備は終り、13時半から受付が始まりました(写真1)。
また、「欲求」には「存在欲求」と「所有欲求」があるそうです。存在欲求は人と人、人と自然で充足される欲求で、幸福を実感します。所有欲求は自然を所有することで従属される欲求で、豊かさを実感します。工業社会は所有欲求を充足しましたが、現代のように知識社会へ移行すると存在欲求の充足を求め、「惜しみなく与え合う」という共同体的人間関係が求められるようになります。
お店には人生の手段しか売っておらず、人生の目的は売っていません。愛情も友情もお店では買うことはできません。幸福は下から上へ噴出するよう(ファウンテン効果)にしなければならず、自治体はその条件を整備し、市民が幸福を創り出していくのです。「清らかな空気、澄んだ水、緑の空間」などの生活の場の質の向上が求められています。公園、美術館、博物館、スポーツ施設なども生活の「質」として求められています。
神野先生は、地域の生活様式を充実させることが大切と述べられました。生活空間が人の創造活動の場となり、学び合う場が文化の形成に繋がっていきます。地域には、交流の場と出会いの場が必要であり、「道」も出会いの場となります。日本では子どもたちが道で走り回っていないと外国の人は驚くそうです。先生は、都市再生の例として、フランスのアルザス・ロレーヌの中心都市ストラスブール市を紹介されました。アルザス・ロレーヌは「最後の授業」で有名ですが、ストラスブールは1994年に路面電車(LRT)を復活させて自動車の市中心部への乗り入れを禁止し、「環境と文化」による都市再生を実現させました。当初反対されましたが、それによってかえって人が集まるようになり、EU議会や高等行政学院などが設置されました。そして、バイオなどの知識集約型産業が開花しています。都市全体が公園であり、美術館であるという羨ましいほどの都市になったそうです。神野先生は、住民たちの自発的な手で地域力を高め、「幸せなまち」を作っていかねばならないことを強調されました。
神野先生の講演の始まりは地球環境問題であったので、地域社会問題とどう関係するのか疑問でした。それが、話が進むにつれて、人と自然、人と人の関係へと展開していき、最後は、ストラスブールの具体例を示しながら、現代の地方都市がめざすべき姿へと見事に導いていかれました。最後に話された、『子どもたちのための「緑の木陰と人間の絆の木陰」を創る』の言葉が心に残りました。