循環器内科
県西地区の基幹病院として、当科および心臓血管外科から循環器センターを設立し、おおよそ30万人におよぶ西湘地区の心臓血管救急診療を24時間365日、内科、外科の両面より担っております。救命救急センターの救急専門医がまず初療を行い必要に応じて、我々が直ちに専門診療に移ることが可能となっております。主たる急性心筋梗塞や致死性不整脈など心臓血管救急疾患は一分一秒が命取りになり得る状況ですので、このようなすばやい連携により致命傷になりかねない患者さんを日夜診療しております。日本循環器学会、日本不整脈心電学会、日本内科学会などより専門医認定を受けた循環器内科専門医が在籍し、循環器疾患の各分野の専門的診療を提供しており、救急診療のみならず超高齢化社会に突入する地域の診療のニーズにお応えすべく、専門的治療はもちろん他科とも連携し集約的に患者さん個々に応じ診療しております。また、当院には心不全専門認定看護師(2016年7月時点で全国で296名)が在籍しております。看護の立場からも積極的に循環器疾患にも介入し、医師と協力し患者さんのマネージメントを行っており非常に好評です。
昨年度の当科の診療実績としては、急性心筋梗塞88例の緊急治療と当センターに1年間で1,206人の患者様が入院しましたが、高齢化社会を反映し心不全の症例が最も多い傾向にあります。また、心房細動症例も増加の一途をたどっており、治療の一つとしてカテーテルアブレーションを近年積極的に導入しており成績も良好で、同治療には脳梗塞はもちろん心不全治療にも非常に有用であるエビデンスが構築されております。また、心臓疾患の患者さんは急性期に一定期間の安静が必要となり筋力の低下は避けられず、速やかに社会復帰と再発予防のため入院中はもちろんですが退院後も外来で心臓リハビリテーションを充実させております。地域の診療機関とも定期的にカンファレンスを開催(現在はコロナ禍にて中断)させていただき、お互い紹介しやすい環境づくりに努めさせていただき患者さんの長期的な管理を志しております。
循環器疾患は前述のごとく緊急を要する疾患群であり、患者さんやそのご家族にとって慣れ親しんだ小田原の地で医療を完結できるような体制づくりを目指しております。
昨年度の当科の診療実績としては、急性心筋梗塞88例の緊急治療と当センターに1年間で1,206人の患者様が入院しましたが、高齢化社会を反映し心不全の症例が最も多い傾向にあります。また、心房細動症例も増加の一途をたどっており、治療の一つとしてカテーテルアブレーションを近年積極的に導入しており成績も良好で、同治療には脳梗塞はもちろん心不全治療にも非常に有用であるエビデンスが構築されております。また、心臓疾患の患者さんは急性期に一定期間の安静が必要となり筋力の低下は避けられず、速やかに社会復帰と再発予防のため入院中はもちろんですが退院後も外来で心臓リハビリテーションを充実させております。地域の診療機関とも定期的にカンファレンスを開催(現在はコロナ禍にて中断)させていただき、お互い紹介しやすい環境づくりに努めさせていただき患者さんの長期的な管理を志しております。
循環器疾患は前述のごとく緊急を要する疾患群であり、患者さんやそのご家族にとって慣れ親しんだ小田原の地で医療を完結できるような体制づくりを目指しております。
認定施設
日本内科学会認定内科専門医教育関連病院
日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
日本不整脈学会・日本心電学認定不整脈専門医研修施設
日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
日本不整脈学会・日本心電学認定不整脈専門医研修施設
主な対象疾患
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、徐脈性および頻脈性不整脈、心不全、心臓弁膜症、大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離)、末梢血管疾患、心膜心筋炎、肺血管疾患など
スタッフ紹介
役職名 氏名 |
資格等 | 専門領域 |
---|---|---|
病院事業管理者 川口 竹男 |
日本内科学会教育指定病院教育責任者、日本内科学会総合内科専門医・認定内科医・指導医、日本循環器学会専門医、日本超音波医学会専門医、産業医 | 虚血性心疾患、心臓超音波、運動負荷、循環器疾患一般 |
内科系診療部長・部長 弓削 大 |
日本内科学会総合内科専門医・認定内科医・指導医、日本循環器学会循環器専門医、日本不整脈学会ICD/CRT-D植込み認定医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 | 不整脈、循環器疾患一般 |
担当部長 東谷 浩一 |
日本外科学会認定医・外科専門医、臨床研修指導医 | 末梢血管、静脈病、循環器疾患一般 |
担当部長 成毛 崇 |
医学博士、日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、心臓リハビリテーション指導士、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、ICD/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修終了 | 心不全、心筋症、血管生理、循環器疾患一般 |
担当部長 根本 照世志 |
日本内科学会認定内科医・指導医 | 虚血性心疾患、循環器疾患一般 |
担当部長 堀口 愛 |
日本内科学会認定内科医・指導医 | 循環器疾患一般 |
医長 新井 順也 |
日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会認定実施医、ICD/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修終了、臨床研修指導医 | 循環器疾患一般 |
医師 本田 浩平 |
産業医 | 循環器疾患一般 |
医師 岩城 大輔 |
循環器疾患一般 | |
医師 小澤 樹央 |
循環器疾患一般 |
入院診療実績
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|
急性冠症候群 | 135 | 74 | 89 | 115 | 109 |
狭心症 | 329 | 222 | 276 | 341 | 299 |
心不全 | 155 | 131 | 181 | 149 | 178 |
心臓弁膜症 | 51 | 24 | 29 | 26 | 17 |
大動脈疾患 | 23 | 15 | 17 | 16 | 14 |
不整脈 | 163 | 118 | 172 | 176 | 200 |
心臓カテーテル検査 | 688 | 556 | 662 | 748 | 723 |
冠動脈形成術(PCI) (うち緊急) |
201 (100) |
144 (60) |
166 (80) |
198 (89) |
178 (85) |
アブレーション (うち心房細動) |
61 (42) |
39 (32) |
52 (35) |
48 (39) |
66 (57) |
末梢血管形成術 | 13 | 11 | 26 | 28 | 23 |
ペースメーカー | 67 | 59 | 89 | 100 | 96 |
診療内容
急性冠症候群に対する救急診療
突然発症し、致命的となりうる急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症)を救命救急医と連携を取りながら、積極的に受け入れ、迅速に心臓カテーテル検査及びステント治療を行っております。
ステント治療前
ステント治療後
胸痛を訴える症例の診断・治療
心臓カテーテル室
外来でトレッドミル運動負荷試験や核医学検査をおこない、最終診断には短期入院の上、心血管造影を施行し治療方針を決定します。結果により、カテーテル治療(冠動脈ステント留置術)、冠動脈バイパス術(心臓血管外科)もしくは薬物療法を選択いたします。
心不全、心筋疾患の診断・治療
心不全治療に新時代が到来
心不全は心臓の収縮力の程度(駆出率)で駆出率の低下した心不全と低下せず保たれている心不全に大きくは分類されます。
前者の心不全においては標準的治療薬(ACE阻害剤またはARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬(MRA))が治療の中心を長年になっていました。しかし、ここ数年のうちに1.サクビトリル・バルサルタン(ARNI)、2.SGLT2阻害薬、3.イバブラジンなど新たな薬物の登場により日本人を含む対象とした大規模臨床試験において予後改善効果を示しました。それにともない長らく活躍してきた標準的治療薬にこれらの新たな薬物が取って代わる可能性が高くなってきております(図)。
一方で、後者の心不全にも変化を認めます。これまで「肥大型心筋症」として見過ごされてきた心臓アミロイドーシスやファブリー病に対しても有用な治療法が発見され、とりわけその診断が重要になりました。これには心電図、心エコーのみならず心筋生検や心臓MRIといったツールの組み合わせが必要になります。
当科では、このように複雑性を増す心不全の各病態に対応して、経験のある医師が検査と治療を適切に行って参ります。また、心不全の認定看護師や心臓リハビリテーション指導士といった専門スタッフとともに多職種での介入を入院、外来を通じ広く展開していきます。
心不全は心臓の収縮力の程度(駆出率)で駆出率の低下した心不全と低下せず保たれている心不全に大きくは分類されます。
前者の心不全においては標準的治療薬(ACE阻害剤またはARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬(MRA))が治療の中心を長年になっていました。しかし、ここ数年のうちに1.サクビトリル・バルサルタン(ARNI)、2.SGLT2阻害薬、3.イバブラジンなど新たな薬物の登場により日本人を含む対象とした大規模臨床試験において予後改善効果を示しました。それにともない長らく活躍してきた標準的治療薬にこれらの新たな薬物が取って代わる可能性が高くなってきております(図)。
一方で、後者の心不全にも変化を認めます。これまで「肥大型心筋症」として見過ごされてきた心臓アミロイドーシスやファブリー病に対しても有用な治療法が発見され、とりわけその診断が重要になりました。これには心電図、心エコーのみならず心筋生検や心臓MRIといったツールの組み合わせが必要になります。
当科では、このように複雑性を増す心不全の各病態に対応して、経験のある医師が検査と治療を適切に行って参ります。また、心不全の認定看護師や心臓リハビリテーション指導士といった専門スタッフとともに多職種での介入を入院、外来を通じ広く展開していきます。
図:心不全治療アルゴリズム
日本循環器学会/日本心不全学会.2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Tsutsui.pdf(21年4月閲覧)
日本循環器学会/日本心不全学会.2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Tsutsui.pdf(21年4月閲覧)
徐脈・頻脈など不整脈の診断・治療
心房粗細動や頻脈発作の症例に対して薬物治療やカテーテル焼灼術による治療を行います。心房細動に対しては症例に応じて、高周波アブレーションや冷凍(クライオ)バルーンアブレーションを選択しております。また洞不全症候群に代表される徐脈性不整脈にはペースメーカー植込み術を、致死的不整脈に対してはICD(植込み型除細動器)植込み術を行っています。
高周波アブレーション
冷凍バルーンアブレーション
ペースメーカー
その他、心臓手術が必要な症例に対しては、心臓血管外科と緊密な連携のもと、チーム医療を行っています。
慢性期には心臓リハビリテーションチームを形成し、リハビリ技師、看護師とタッグを組み、多様化する患者像に合わせ、入院中から退院後も日常生活などの指導を行っております。
慢性期には心臓リハビリテーションチームを形成し、リハビリ技師、看護師とタッグを組み、多様化する患者像に合わせ、入院中から退院後も日常生活などの指導を行っております。
トピックス リードレスペースメーカーの登場
めまい、ふらつき、失神、心不全の原因となる徐脈性不整脈に対する治療法として、ペースメーカー療法が確立されております。従来は、経静脈アプローチからリード線を心腔内まで留置し、皮下ポケットを作成しペースメーカー本体を移植しておりました。超高齢化社会に伴いペースメーカー療法の需要は増すばかりで昨年度は当院でも初めて年間100件の症例数となりましたが、一方でリード線やペースメーカー本体の感染症などの合併症も5年間で10%前後みられるのも事実であります。
そこで、主要合併症の半数を占めるポケット/リード関連の合併症を根絶すべく、リード線なしのペースメーカーが登場しました。容量1㏄、重さ1.75gの大きさのペースメーカーを大腿静脈からカテーテルを使用して右心室に留置するもので、手術痕などもなく翌日には退院も可能で認知症などで長期に入院できない患者さまにも対応可能となっております。
そこで、主要合併症の半数を占めるポケット/リード関連の合併症を根絶すべく、リード線なしのペースメーカーが登場しました。容量1㏄、重さ1.75gの大きさのペースメーカーを大腿静脈からカテーテルを使用して右心室に留置するもので、手術痕などもなく翌日には退院も可能で認知症などで長期に入院できない患者さまにも対応可能となっております。
上図:従来のリード型ペースメーカー
下図:新たなリードの無いペースメーカー
提供:日本メドトロニック株式会社
下図:新たなリードの無いペースメーカー
提供:日本メドトロニック株式会社