病理診断科

病理診断科

診療科紹介

 病理検査とは病気の診断や原因の究明を目的とした検査で、それを行う所が病理診断科で、臨床検査部門の奥に病理検査室があります。当科は臨床科(標榜科)の1つであり、病理診断は医師免許が必要な『医行為』で、患者様と顔を合わすことがほとんどない病理医とよばれる医師が勤務しています。当科には常勤病理医1名と非常勤病理医4名が在職しています(スタッフ紹介参照)。 また、病理検査室の臨床検査技師は常勤技師4~5名、非常勤技師1名で、病理医と二人三脚で病理検査に当たっていますが、技師も患者様と顔を合わすことがほとんどありませんので、いわば病院の縁の下の力持ちといった役回りです。病理検査(診断)の概略をお知りになりたい場合は『日本病理学会から市民の皆様に:病理診断とはなあに』http://pathology.or.jp/ippan/pathdiag.htmlをご覧下さい。

診療内容


主な業務内容は組織診断、細胞診断、病理解剖で、認定病理検査技師、日本臨床細胞学会認定細胞検査士(臨床検査技師)の協力のもと専門性の高い診断体制を構築しています(第9回小田原市立病院市民公開講座で当院の臨床検査技師が講演した『病理検査の役割』の抜粋をご覧下さい)。

組織診断

組織診断とは主に生検(内視鏡検査等で患者様から5mm程度の小さな組織を採取する検査)と手術により切除された体の一部(組織)の診断で、患者様にもわかりやすい結果報告を迅速に行っており、必要に応じて患者様にも報告書を印刷してお渡しすることができます。また、他施設での組織・細胞診断報告に対するセカンド・オピニオンを行っています。患者さんご自身が(ガラス)標本と診断報告書のコピーを持参の上、各診療科に受診していただければ診断の再検討を行います。

術中迅速組織診断は手術中に取り出された病気の一部(組織)を瞬間凍結し、特殊な器具を用いて直ちに標本を作製して、良性・悪性の診断や切除臓器の端に癌の取り残しがあるかなどを判定することによって、術式の決定や変更を提案します。手術術式などに影響する業務で、手術中の組織採取から診断報告までをできるだけ短時間(5~10分以内)に行うようにしています。

細胞診断

細胞診断は体の一部、あるいは体から排出された細胞をガラスに塗りつけて、色付けをして顕微鏡で観察し、どのような細胞(病気)があるかを判定します。子宮の一部、喀痰、尿、胸水・腹水、乳腺、甲状腺など様々な検査材料の細胞を検査します。 乳腺、甲状腺などの『しこり』の診断時には、この『しこり』を細い注射針で刺して細胞を直接採取します。国家認定を受けた細胞診断検査に携わる臨床検査技師(日本臨床細胞学会認定細胞検査士)が細胞診断標本全体をくまなく観察しますが、これは初期判定検査という最も重要な診断過程で、それをさらに病理医(日本臨床細胞学会認定専門医・指導医)が最終診断して、より正確な判定を行っています。細胞診断も患者様にもわかりやすい結果報告を迅速に行っており、必要に応じて患者様にも報告書を印刷してお渡しすることができます。病理医と臨床検査技師で勉強会を開催し、細胞診断の精度の向上を計っています。

病理解剖

病理解剖は死因となった病気は何か、生前の臨床診断が正しかったのか、病気に対する治療効果などを究明するため、ご遺族の承諾を得て行います。ご遺族の負担軽減のため検査技師の十分な準備や介助などにより、可能な限り短時間に行うようにしています。病理解剖には臨床研修医の見学や介助を必須としており、研修医のための重要な教育機会にもなっています。
 
免疫染色
当院では感染対策に十分に留意しながら、新型コロナウイルス感染で亡くなられた患者様の病理解剖を行っています。写真は新型コロナウイルス感染解剖例の肺組織を用いて、新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシド蛋白に対する抗体で免疫染色を行ったものです。当院の臨床検査科の遺伝子検査部門では、新型コロナウイルスのPCR検査を実施していますが、病理診断科では新型コロナウイルス感染例における生検組織材料や細胞診材料においても、この免疫染色を施行し、病理組織学的な立場から新型コロナウイルス感染症の組織・細胞への影響を検証し、病理検査室の臨床検査技師の感染対策にも役立てています。
病理解剖の結果は担当医への報告のみならず、検査技師を含む多くの医療関係者が参加する小田原医師会共催の院内の臨床病理検討会(Clinical and Pathological Conference: CPC)で検証を行っています。また、病理解剖に御協力いただいた患者様の慰霊行事を年1回病院全体で行っています。
病院CPCの様子

スタッフ紹介

当院の病理診断は常勤病理医1名(主任部長)、非常勤病理医4名で行っています。当科は昭和大学医学部臨床病理診断学講座を基幹施設としています。
氏名 役職名 資格等
三富 弘之 常勤医師
(病理診断科 主任部長)
・昭和大学医学部 臨床病理診断学講座 客員教授
・順天堂大学医学部 人体病理病態学講座 非常勤講師
・日本病理学会認定専門医・研修指導医
・日本臨床細胞学会認定細胞診専門医・指導医
林 大久生 非常勤医師 ・順天堂大学医学部 人体病理病態学講座 准教授(医局長)
・日本病理学会認定専門医・研修指導医
・日本病理学会分子病理専門医・指導医
関 れいし 非常勤医師 ・戸田中央病理診断科クリニック部長
・日本病理学会認定専門医・研修指導医
・日本臨床細胞学会認定細胞診専門医・指導医
村井 聡 非常勤医師 ・昭和大学医学部 臨床病理診断学講座 助教
・日本病理学会認定専門医
大平 泰之 非常勤医師 ・昭和大学医学部 臨床病理診断学講座 助教
・日本病理学会認定専門医

診療実績(診断精度管理、学会・論文発表)

診療実績

2018~2022年度までの5年間の病理検査部門の診断(検査)件数と病理解剖件数を下の表に示しています。

年度 組織診断件数 細胞診断件数 病理解剖件数
2018年 4,357 2,962 5
2019年 4,667 6,003 7
2020年 3,853 4,824 4
2021年 4,173 4,903 11
2022年 4,318 4,709 3

診断精度管理

正確な病理検査を提供する技術や検査精度を保つために、日本臨床衛生検査技師会や日本臨床細胞学会関連の精度管理に参加しています。また、臨床医と病理医による臨床情報と病理検査結果の討論会も行っており、この会にも検査技師が参加しながら臨床医、病理医、検査技師の間の十分なコミュニケーションを計るよう努力しています。また、技師が施行した超音波検査を中心に超音波検査を担当した技師と病理検査室の技師による検討会も行っており、乳腺、肝臓、胆嚢、膵臓、甲状腺などの疾患を技師主導のもと定期的に行い、病理検査室と超音波検査を行っている生理検査室の技師間の連携を図り、的確な検査や診断が行えるよう努めています。

トピックス

毎年、当院で医療機関向けに発刊している診療科ガイドにこれまで掲載してきた病理診断科における診断トピックスを紹介します。

学会・論文発表

病理医のみならず、病理検査室で仕事をしている検査技師も学会発表や学術論文作成を行いながら、最新の医学情報の取得や診断精度の向上を心掛けています。主任部長はこれまで7つの臨床病理学的研究課題に対する文部科学省研究振興局(独)日本学術振興会科学研究費を受け、論文や学会で発表をしながら、それらの臨床病理学的知見を日常の病理診断業務に活かしています(病理診断科主任部長業績をご覧下さい)。

小田原市立病院

〒250-8558 神奈川県小田原市久野46番地 電話:0465‐34‐3175ファックス:0465‐34‐3179

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