外科

外科

 当科は西湘地区の基幹病院として、消化器全般、乳腺、そけいヘルニアなどの幅広い疾患に対応できるように体制を整えており、下記のように複数の学会の修練、指導施設に認定されております。
 また、当病院は西湘地区の地域がん診療連携拠点病院であり、消化器がん診療におけるオピニオンリーダーを維持するために、積極的に学会などで発表を行っております。
 さらに、当病院は救命救急センターに認定されており、消化管穿孔、急性虫垂炎などの腹膜炎や外傷性臓器損傷などの救急疾患にも24時間、365日対応しております。我々外科チームは常に患者さんを最優先し、そして、最新の医療を提供できるように、各自切磋琢磨し、日々の診療に当たっております。


認定施設

外科専門医制度指定修練施設
日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度認定修練施設(A)
日本大腸肛門病学会認定施設
日本消化器内視鏡学会指導施設
日本乳癌学会認定関連施設

主な対象疾患

上部消化管 食道がん(頚部を除く)、胃がん、十二指腸がん、粘膜下腫瘍(GISTなど)、胃十二指腸潰瘍穿孔
下部消化管 結腸がん、直腸がん、肛門がん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、急性虫垂炎、憩室炎、腸閉塞、小腸大腸穿孔、直腸脱、痔核
肝胆膵脾 肝臓がん(原発性、転移性)、胆道(胆管、胆嚢)がん、膵臓がん、膵臓腫瘍(IPMN、NETなど)、十二指腸乳頭部がん、胆石症、胆嚢炎(急性、慢性)外傷性臓器損傷
乳腺 乳がん(センチネルリンパ節生検、乳房温存術、乳房再建を含む)、乳腺腫瘍(葉状腫瘍など)
その他 そけいヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア

スタッフ紹介

役職名
氏名
資格等 専門領域
外科系診療部長
清家 和裕
医学博士、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会認定医・専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医師、臨床研修指導医、千葉大学臨床教授 大腸、直腸、胃、食道、乳腺、肝臓、胆嚢、鏡視下手術
主任部長
亀髙 尚
日本外科学会外科認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本肝胆膵外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本乳がん検診精度管理中央機構健診マンモグラフィ読影認定医師、臨床研修指導医、千葉大学臨床准教授 肝臓、胆道、膵臓、胃、食道、大腸、直腸、乳腺、鏡視下手術
消化器外科主任部長
牧野 裕庸
医学博士、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本肝胆膵外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医師、臨床研修指導医、千葉大学臨床講師 肝臓、胆道、膵臓、胃、食道、大腸、直腸、乳腺、鏡視下手術
担当部長
深田 忠臣
医学博士、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医師 肝臓、胆道、膵臓、胃、食道、大腸、直腸、乳腺、鏡視下手術
担当部長
秋山 貴洋
医学博士、日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医師、臨床研修指導医、日本肝胆膵外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医 肝臓、胆道、膵臓、胃、食道、大腸、直腸、乳腺、鏡視下手術
医長
粕川 宗太郎
日本救急医学会救急科専門医 外科一般
医師
野本 義長
  外科一般
医師
仲 祐太朗
  外科一般
(非常勤医師)
北里大学乳腺外科主任教授
三階 貴史
医学博士、日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会専門医・指導医・評議員、がん治療認定医機構認定医・指導責任者、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医師、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建エキスパンダー/インプラント責任医師、日本遺伝性腫瘍学会専門医、日本癌治療学会代議員、日本リンパ浮腫治療学会評議員 乳腺

診療実績

(カッコ内は内視鏡手術の件数)
年度 2019 2020 2021 2022 2023
総手術件数 674 530 697 661 598
食道癌 5
(1)
2
(1)
7
(6)
2
(2)
0
胃癌 46
(11)
31
(16)
48
(23)
43
(10)
33
(18)
大腸癌 111
(81)
96
(76)
128
(102)
108
(88)
116
(95)
 結腸癌 79
(58)
71
(53)
91
(69)
76
(56)
75
(63)
 直腸癌 32
(23)
25
(23)
37
(33)
32
(32)
41
(32)
肝臓癌 33
(1)
21
(2)
43
(7)
40
(6)
23
(9)
胆道癌 17 16 10 11 7
膵臓癌 17
(1)
15 19
(1)
22
(2)
12
(3)
乳癌 25 20 11 12 26
胆石、胆嚢炎 99
(86)
66
(62)
109
(95)
104
(87)
72
(68)
急性虫垂炎 58
(52)
40
(36)
53
(52)
52
(47)
46
(39)
そけいヘルニア 95
(43)
78
(68)
103
(78)
119
(86)
108
(73)
その他ヘルニア 18 17 27
(2)
25
(4)
8
(1)

診療内容

食道がん

 食道がんの手術では胸部と腹部を操作するので、傷も大きく、負担の大きい手術となります。当科では、胸腔鏡と腹腔鏡を用いて、傷の小さい負担の少ない手術を行っております。通常の開胸に伴う大きな傷の痛みは開腹の傷より強いため、手術後の回復にも大きく影響しております。開胸に伴う20cm以上の傷が胸腔鏡では1cmほどの傷が数か所できるだけであり、回復が早いだけでなく、手術の合併症も減っております。進行食道がんに対しても、手術前に放射線と抗がん剤を組み合わせた治療を行って、腫瘍を縮小させてから、鏡視下手術を積極的に行って、手術成績の向上を目指しています。

胃がん

 胃がんは日本人に多いと言われる悪性腫瘍のひとつです。当科ではがんの進行度に応じて腹腔鏡手術を行っております。完全腹腔鏡下手術(吻合を腹腔鏡で行う手術)によって、3~4cm程度の小さな傷で手術が可能となりました。また、胃全摘術でも腹腔鏡手術により10日前後の入院期間で退院できるようになって参りました。さらに、抗がん剤の治療に関しても、最新の情報に基づいて行っております。手術だけでは根治手術(完全切除)が困難と考えられた場合は、手術前に抗癌剤治療を行って腫瘍を小さくして確実に腫瘍を切除する工夫を行っております。また、外来化学療法室では化学療法認定看護師および化学療法認定薬剤師により、安心して最新の化学療法をお受けいただけるよう心がけております。

大腸(結腸直腸)がん

 当科の特徴は、下記の通りです。

集学的治療

 大腸癌の治療は手術だけでなく、化学療法(抗癌剤治療)、放射線治療などがあります。我々の施設はそれらの治療に対応できる体制を整えており、病状に応じて、多職種と連携して治療を行っております。手術だけでは根治手術(完全切除)が困難と考えられた場合は、手術前に抗癌剤や放射線を組み合わせた治療を行って腫瘍を小さくして確実に腫瘍を切除する工夫を行っております。また、外来化学療法室では化学療法認定看護師および化学療法認定薬剤師により、安心して化学療法をお受けいただけるよう心がけております。

腹腔鏡手術

 早期癌だけでなく進行癌の方に対しても、腹腔鏡下手術を行っており、最新の器械で、安全で確実な腹腔鏡手術を心がけております。最近では3~4cmほどの小さな傷で、10日前後の入院で手術が可能となって参りました。また、結腸では腸管を傷の外でつなぐ(吻合と言います)のが一般的ですが、吻合を腹腔鏡下で体の中で行う体腔内吻合による完全腹腔鏡下手術(胃癌ではすでに広く行われています)をいち早く取り入れており、傷をより小さくして、傷のトラブルを軽減する工夫をしております。
外科手術写真

直腸がん手術

 さらに、難易度が高いと言われている直腸癌の腹腔鏡手術も積極的に行っております。
 直腸がんでは病状により人工肛門が必要となることがあり、患者様の日常生活に大きな影響を及ぼします。肛門に近い直腸がん(下部直腸がん)には括約筋間直腸切除という肛門からの吻合することで永久の人工肛門を避ける手術は多くの大学病院やセンター病院で行われており、我々も同様に必要と考えられれば、行っております。しかし、括約筋間直腸切除での肛門からの吻合では内肛門括約筋という肛門を締める筋肉の一部が切除されるために、手術後の排便機能障害は高率であることも分かっております。肛門が残っても多くの方が排便障害に悩まれております。最近はTaTMEという経肛門内視鏡手術が広がってきており、肛門からの吻合が容認される傾向があります。我々は独自に手術手技を工夫して、がんの根治性を保ちつつ、できるだけ肛門からの吻合を避け、排便障害を軽減する努力を行っております。さらに、我々は手術前の画像を用いて、肛門からの吻合が回避できるかどうかを予測しており、手術内容の説明に役立てております。

 また、最初の直腸手術の時や手術後に縫合不全が起こった時に多くの施設で一時的な人工肛門を作っております。人工肛門の負担や関連する合併症が多くありますので、我々は極力人工肛門を避ける努力をしております。

高難度手術

 周囲臓器に浸潤した腫瘍や直腸癌の局所再発に対しては、膀胱、前立腺、子宮、膣、仙骨などを一緒に切除する骨盤内臓全摘術を泌尿器科、婦人科、整形外科と連携して行っており、術後合併症も少なく良好な成績が出ております。

ストーマケア

 直腸がんでは病状により人工肛門(ストーマ)が必要となることがあります。生活上の大きな変化であり、不安が強い方も多くいらっしゃいます。その際には、専門の認定看護師(WOCナース)によりきめ細かい管理を行っております。

炎症性腸疾患

 クローン病や潰瘍性大腸炎は複雑な病態を呈するために、治療に難渋することがしばしばあります。特に、潰瘍性大腸炎の手術は限られた施設で行われているのが現状でありますが、当科では経験のある専門医が対応しております。通常重症の潰瘍性大腸炎は手術を3回に分けて行なうことが一般的ですが、当科では手術を2回に減らす努力をしております。また、重症度が低く、緊急手術でなければ(待機手術と言います)、人工肛門を作らないで、1回で手術を完了する方もいらっしゃいます。特に当科では全例腹腔鏡下手術を行っており、3~4cmほどの小さな傷で手術が可能ですので、若い方が多いこの御病気には美容的にもメリットは大きいと考えております。

 術式にはさらに直腸を少し残す肛門管吻合と直腸粘膜を全て切除する肛門吻合がありますが、我々はその二つの術式に長所、短所を提示し、病状に応じた術式を選択しております。また、クローン病では複数の手術が必要となることが多いので、腹腔鏡手術は敬遠されがちですが、最大限腹腔鏡手術を取り入れております。

急性虫垂炎

 急性虫垂炎は一般的に“盲腸”と呼ばれているもので、盲腸の端についている虫垂に炎症が起こるものです。緊急手術となることがしばしばありますが、当科では緊急手術においても積極的に腹腔鏡手術を行っており、美容的で術後の痛みも軽く、傷の感染などの合併症も少ないと考えております。また、膿を形成した炎症が強い虫垂炎に対しては、抗生剤にて炎症を改善させて腹腔鏡で手術を行うインターバル手術も行っております。急性虫垂炎は緊急性を要するため、診断が重要となります。当施設では過去の急性虫垂炎の手術例のCT画像を検証したデータをもとに、的確に診断するように心がけております。

肛門疾患

 肛門には痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)など多くの病気がありますが、どうしても病院を避けがちになるものです。当科では、肛門病の専門医により、手術だけでなく、病態に応じた診療を行っております。特に直腸脱という、腸がお尻から出てくるご高齢の女性に多い疾患には力を入れております。一般的にはご高齢の方が多いため、肛門からの手術が広く行われておりますが、当施設では再発が少ないと言われている腹腔鏡直腸固定術を積極的に行っております。

乳がん

 当院の乳がんの治療の特徴はすべての治療を同一施設内で行えることです。手術だけではなく、化学療法、放射線治療、緩和治療をすべて行うことができますので、別の施設に移動する必要はありません。西湘地区では唯一の病院です。手術に関しては、根治性と美容性の両立が重要であり、当科ではセンチネルリンパ節ナビゲーションおよび乳房温存手術を行っております。また、乳房全摘が必要となった場合は、形成外科で乳房再建術を行うことができます。乳癌治療に関しては、ホルモン受容性、HER2抗体などの状態により、治療が大きく変わります。ガイドラインなどに準じて最新の治療を行っております。また、最新の放射線治療装置を導入しましたので、より効果的な治療が可能となりました。
 本年4月から北里大学乳腺外科主任教授の三階貴史教授が非常勤医師として着任いたしましたので、大学病院と同等の医療を提供できるものと考えております。

ヘルニア(そけい、大腿)

 そけい部が膨らむのがそけいヘルニアや大腿ヘルニアです。当科では、腹腔鏡手術を行っており、従来の手術と比べ、手術後の痛みが軽く、傷の腫れがほとんどないので、メリットの大きい手術法と考えております。また、全身麻酔が困難な方にはクーゲルパッチという補強の膜などを用いて、術後の痛みやつっぱり感が少ない治療を行っております。

小田原市立病院

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