(写真4)細密な金線の描写 今回の展示では、2点の観音像が出品されています。その一つが「寂園」です。この仏画は、1971年近藤氏47歳の作品です。暗黒の背景に金泥の極細線で観音像が描かれています。近藤氏は、幼い頃から僧侶の父親から仏画の手ほどきを受けていたそうです。その技量は、美術学校で更に磨かれたことでしょう。普通、絵を見るときに10cmの近さまで顔を近づけることはありません。ところが、この観音像は顔を近づけないと、近藤弘明という画家の技量は分からないのです。仏画は線が命です。描きたい輪郭線を迷わず一気に引かなければなりません。この観音像では胸の辺りの描写技巧が尋常ではないのです(写真4)。狭い幅に何本もの極細線が何本も描かれているのは、たゆまない修練の賜ものでしょう。来場者に「もっと近づいて見て下さい」とお願いすると、皆さん驚かれ、「言われなければ気付かなかった」と反応されました。