ここ連日、記録的な暑さが続いています。背後に山地をひかえ、南に相模湾を望む小田原は、昔から一年を通して温暖な気候の地として知られていました。明治の文豪・斎藤緑雨(りょくう)は、この小田原を「山よし 海よし 天気よし」と讃えましたが、今年は様相が一変。
7月は、最高気温が35度以上となる「猛暑日」が県内で最も多い計10日となり、31日には観測史上2番目に高い37.3度を記録。8月4日はさらにそれを上回る観測史上最高タイの38度を記録しました。
このような気象状況では、熱中症の危険が極めて高くなります。外出はできるだけ避け、適切にエアコンを使うとともに、水分をこまめにとるなど、熱中症予防のための行動をとることが重要です。
近年の異常とも言える気象は、CO2などの温室効果ガス排出に起因する「地球温暖化」が影響していると言われています。
地球温暖化の進行は、酷暑や集中豪雨、頻発する台風など、地球規模で気候が変わる、いわゆる「気候変動」を引き起こし、それを実感するような現象が実際に身の回りで起きています。
本市では早い段階から、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げ、オール小田原による「小田原・箱根気候変動ワンチーム宣言」や、「小田原市気候変動対策推進計画」の策定、脱炭素化に積極的に取り組む地域を国が支援する「脱炭素先行地域」の選定による事業推進、地域マイクログリッド構築事業、EV(電気自動車)を活用した新たな地域交通事業など、脱炭素社会を目指す先進的な取組を進めています。
地球規模での気候変動に対して、市では、中・長期的かつ短期的な視野で、様々な施策を進める一方、実際に頻発する自然災害への対応や備えが大変重要となっています。
最近では、沖縄地方に停滞し複雑な動きをした台風第6号に続き、先週は台風第7号が本州に上陸。太平洋高気圧の影響で関東直撃こそ免れましたが、西日本方面では記録的な大雨となりました。
このたびの台風により、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、 被害に遭われた皆様に対して心からお見舞いを申し上げます。
最近の台風は大型化しており、台風本体から離れた地域でも大雨が降ることが少なくありません。気象条件によっては、次々と雨雲が発生する線状降水帯により、長時間にわたり同じ場所で雨が降り続けるなど、予測がつきにくい状況となっています。
今回の台風第7号についても、台風の進路や降雨予測が大変難しく、市民の命を守るための避難指示の発令是非が大変悩ましい状況でした。
結果として台風本体が西側にずれたため、大雨には至りませんでしたが、本市では、市ホームページやSNS、おだわら防災ナビなどを使い、市民の皆さんが安心して準備・行動をしていただけるよう、早めの情報発信を行いました。
台風第7号が日本海へ抜けた後も、一部地域では局地的に強い雨に見舞われました。静岡県内で一時豪雨となり新幹線がストップした影響は、東京駅から博多駅までの東海道・山陽新幹線の全線に拡大。この交通機関の乱れにより、乗客らが滞留し、混雑したことは、今後の課題・教訓となりました。
また今年は、9月1日で関東大震災から100年の節目を迎えます。
小田原警察署の調べによると、この地震で小田原は、死傷者が4,689人(死者1,299人、負傷者3390人)、家屋の倒壊や焼失などが10,107戸(全半壊7,857戸、焼失2,164戸、埋没86戸)に上り、関東の中でも鎌倉と小田原地方の被害は特に著しかったと言われています。
また、片浦村根府川では、山津波、いわゆる土石流の発生により、白糸川沿岸の64戸はほとんどが埋没し、死者406人を出したほか、広報おだわら8月号でもお知らせした、根府川駅の列車転覆事故では、約200人の乗客とホームにいた40人がそのまま海に流されるなど、多くの命が失われました。
来るべき大規模地震や激甚化する風水害などから市民の命を守るため、地震被害軽減化のための危険なブロック塀等の撤去に対する補助や、いっせい総合防災訓練の実施、市民向け防災研修「おだわらまなぼうさい」の開催など、災害に強いまちづくりを進めています。
令和5年度は、「関東大震災100年事業」の開催のほか、これまでの取組をさらに強化、またきめ細やかに対応するため、いくつかの事業を展開していきます。
(1)地区防災計画の作成
東日本大震災を教訓とした、平成25年の災害対策基本法の改正を踏まえ、本市では、地域ごとに効果的な防災活動が実施できるよう、令和4年度より、富水地区自治会連合会の小台自治会をモデル地区として、市職員も参加し、地域ごとの災害特性に応じた「地区防災計画」の作成に取り組んでいます。
(2)物資備蓄計画の策定
災害時に必要な物資の備蓄について全体計画を策定し、従来の公的備蓄と、事業者との連携による流通備蓄の両面による供給体制を構築します。
(3)災害時のトイレ確保
災害時に避難者が快適で安全安心に過ごせる避難環境を整備するため、令和5年3月末に策定した「小田原市災害時トイレ確保計画」に基づき、「マンホールトイレ」「仮設トイレ」「携帯トイレ」により運用できるよう、必要基数を確保していきます。
令和5年度は、富士見小学校と東富水小学校にマンホールトイレを整備します。
(4)個別避難計画の策定
災害発生または災害発生のおそれがある場合に、自ら避難することが困難で、特に支援を要する「避難行動要支援者」を支援するため、「個別避難計画」を策定します。
令和5年度はモデル地区を選定し、ケアマネジャーや民生委員、介護事業者などと協力しながら、計画づくりを進めます。
今後も市では、ハード・ソフトの両面から、「地域防災力の強化」「防災・減災」における取組を進めるとともに、地域や学校、関係団体、事業所等と連携しながら、より安心・安全で、災害に強いまちづくりに取り組んでいきます。